ツーリングセット

タンクバックは7千円、ヘルメットロック3千円、パンク修理キット1千円、雨具5千円、2千円、ブーツ1万2千円で合計3万円というところであった。思ったほど高くはないことがわかった。バイトをしてお金を貯めることにした。ちょうど豊が家庭教師のバイトを代わってくれないかといってきたところだった。イラストレーターの小学校の子供で自由奔放に育てられていて手に負えないということだった。時給2千円で週に2回であった。生意気な子で教えてもいっこうに静かにならなかった。小学生なので勉強を教えるというよりベビーシッターのようなものだった。しかったら、首になってしまった。ショックだった。人に教えることもできないかと落ち込んでしまった。バイクに関しては少しずつだが、楽しみを感じてきていたところであるが、それ以外については落ち込むことが多かった。何か相当足りないという気はした。1ヶ月働いて、3万2千円となったのでツーリングセットを購入した。初期の目的は叶えたから良しとした。京都の冬は寒かった。盆地のため雪は降らないが底冷えするといわれた。夏が暑いため昔の家はすきま風が通る作りになっている。逆に冬は風の通り道が部屋の暖気を逃がしてしまう。喉が乾燥するのでエアコンの暖房を切って寝ているが、布団を2枚と毛布でどうにか過ごしている感じだ。朝起きるのがつらい。授業が終わって、クラスの友達と分かれて久しぶりに豊の部屋に遊びにいこうと思った。電話しったら、「今日は大丈夫だ。」といわれた。「純次も誘ってみるよ。」といった。純次は、「今日は家庭教師で忙しいけど、9時にはいけるよ。」といった。家庭教師が夜中まであるわけではないので、忙しいといことはないのに、「結局来るなら、いちいち忙しいなんていうな!」、と心の中で叫んだ。忙しい病に掛かっている。純次はいつも、「忙しい。忙しい。」というのが口癖だ。忙しいというと他人より偉いと思っているみたいだ。時間を持て余している私にとっては、「忙しい。」といってみたいものだと羨ましく思った。ビールを持って、7時に豊のマンションにいった。1階の自転車・バイク置き場に駐める。いつも思うがマンションは作りがしっかりしていて、エレベーターがあった。豊の部屋はきれいだ。毎日掃除をしているのだろう。「夕飯は食べたところだと思ったから、ビール持ってきた。」「ありがとう。今日は4コマに経済学の授業があったから、そのまま学食で食べてきたところ。経済学は数学勉強しないといけないみたいだ。数学が苦手だから文系を選んだのに、微分積分をもう一回やるのは。。。」「経済学面白そうだね。数学使わない経済のゼミを選べばよいのでは?」「俺もそう思って探しているところ。」、といいながらビールを飲んだ。自分の専攻している学問よりも経済学の方が面白く感じた。というよりも、他人のしていることが羨ましいだけのような気がした。コンプレックスがあるのだろう。何不自由なく暮らしてきた。いやなことはしない自由があった。勉強だけしていれば良いという環境であった。