教習所

高島屋の夜のバイトは良かった。係りの誘導をするだけで8千円の給料だった。バイクの免許を取ることにした。日常から非日常へ移り変わることが楽しかった。歩くことから自転車で移動した。さらに遠い距離を行きたくなった。クラッチとは何かも知らなかった。ゆっくりクラッチを繋いでいく操作に慣れるまで一日掛かった。教習所の狭い構内を一周した。楽しかった。風を感じた。違う世界があった。バイトの苦労が価値のあるものになった。毎日通い続けた。実地と試験科目を勉強することは、受験勉強を思い出し、楽しかった。まだ、そういうことに充実感を持つことは複雑な気持ちであるが、致し方ない。冬空の中、早起きして免許センターに行き、試験を受けた。多少の緊張感のあと合格を確認した。うれしかった。久しぶりの快感である。また、バイトをした。早く遠出をしたかったからである。自分のバイクが欲しかった。